研究概要 |
・昨年度のインタビューデータ(377サンプル)の解析から、北淡町における地域アイデンティティ(地域住民がその主観的現実を集合的記憶の位相において再創造・維持しようとする際の一連の集合的行為の動機づけ要因)には4つのタイプが存在していることが知れた。すなわち、土地に対するこだわり(愛着や財産性)やそこで営まれてきた人間関係を指向する場合(過去指向)と、地域開発や町並の整備など職住環境の充実を指向する場合(未来指向)の2つの指向性の強弱から構成される4タイプである。 ・尺度法による地域アイデンティティの数量化を試みるため、山形市・磐田市調査(平成5〜8年度)で開発、定式化した24項目からなる尺度を用い、プリテストを実施した。 その際、同一の尺度上では北淡町における地域アイデンティティの各タイプを識別できないことが知れた。あわせて北淡町における地域アイデンティティの各タイプは相互の連関が強く、それぞれ別尺度が妥当する性質のものではないことも解った。 これらの問題は、地域アイデンティティを、方向と大きさが与えられる幾何ベクトルとして定式化することでクリアされた。また北淡町における4タイプの地域アイデンティティは相互に独立ではなく連続し,併存するきっかけ要因(阪神淡路大震災,富島地区の土地区画整理事業, 「野島断層保存北淡町震災記念公園」の開園)から生起していることが確認されたので、地域アイデンティティは自由ベクトルではなく位置ベクトルとして定義した。 今年度本調査では新たに北淡町全域から469サンプルにおよぶ質的・量的データを得て、4タイプそれぞれの方向性と大きさを明らかにした。
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