本年度は4年間に渡り研究費を受給した本研究の最終年にあたり、主として研究のまとめを行なった。また、名古屋駅前の再開発にともない、商業地の都市内地域間競争が激しくなる名古屋について実地調査をおこない、東北の伝統的な都市であり、現代でも地域の中心都市である盛岡・仙台の実地調査もおこなった。さらに、研究のまとめにあたるので、文献・資料の収集・整理にも力をいれた。 都市のイメージを考えるうえで、注目されることが3つあった。 1つは、いくつかの都市にみられる「異人」の存在である。ある種の特徴を持つ「異人」の存在は、都市伝説の研究領域として、実在しないものを実在するものと感じてしまう、都市住民の状況を考える材料として注目されている。しかしながら、いくつかの都市で、当該都市の住民にしか知られていないが、実在の人物が「異人」として伝承されていることがわかり、その存在は地域シンボル性を考えるうえで興味深い。 2つは、都市景観をめぐり浮上してきた都市イメージや地域シンボル性である。都市景観の整備が多くの都市で重要な施策となっている。そうした整備では、住民・行政などで、都市イメージや地域シンボル性が共有されているために容易に進む場合や、逆に大きな違いがあり対立が生じる場合があり、そうしたことの分析から、地域のシンボル性を考えるうえでの問題点をしることができる。 3つには、社会的価値体系の変化のなかで、維持され続けてきた護国神社の存在である。明治期に創建された招魂社は、所在地や建物の構造を変化させ、護国神社として整備され、戦後も続いている。そうした変遷のなかに、都市内での地域シンボル性の変化が読み取れる。
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