1. 本年度は2年研究の後半にあたる。前年度に引き続いて、国内数箇所(琵琶湖、四万十川、伊豆半島等)の観光地についての実地調査をおこない、その調査結果に基づいて、観光現象におけるポストモダンの理論的な分析を試みた。 2. 観光におけるモダンとは、平等性・大量性に裏打ちされた、マス・ツーリズムを基盤としている。そのために観光地側は、老若男女だれもが楽しめるよう、安心・安全で快適な観光地づくりを指向する。しかしそうしたモダンの観光は、成立以来1世紀以上をへて、環境破壊、商業主義、没個性化などの、さまざまな歪みをうみだしてきた。 3. そこで近年、わが国においても、モダン観光のもつ諸種の矛盾を解決するために、モダン観光の理念そのものを問い直し、伝統的なマス・ツーリズムを根本的に見直そうとする動きがある。それが観光現象におけるポストモダンであり、その具体的な観光の実施形態は、次世代型観光と呼べるものだ。 4. そうした次世代型観光は、わが国の観光現象のあらゆる位相でうみだされつつある。自然環境の保護を前面に押し出して、自然観察や、カヌーなどの自然にやさしいアウトドア活動をとりいれた観光形態の増加はその例である。また、日本型温泉旅館でありながら、伝統的なオール・インクルーシブ型の過剰サービスにかわって、食事等の提供をやめ、希薄なサービスで運営する旅館の出現もその例だろう。 5. 次世代型観光は、観光客にも、新しい意識と理解が必要であり、ポストモダンへの転換には、ホスト・ゲスト双方の意識改革が重要な課題となっている。
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