本研究は企業志向を中心にして、従業員意識の比較を主題にしている。特にこの場合、日本・中国・ベトナムの参加国間の従業員意識の比較を中心においた。中国とベトナムの調査については奈良大学社会学部によって行われていたものを参照の対象にし、日本調査については関西の労働組合を中心に約2000のサンプルでの調査となった。なお、中国調査では約1250、ベトナムでは約1500サンプルであった。 本研究では上記課題に対して主に「企業帰属意識」・「合理化志向」・「労働組合満足度」の三点からアプローチをした。従来社会主義企業では所属企業への意味付けの点で開かれた労働市場がないため強い帰属意識が成立していると考えられていた。この点でこの調査はラフなかたちにせよ、従来のこうした見解に修正を加える材料を提出したといってよいだろう。結果は、ベトナムおける企業意識がそれほど低くなく、かつ合理化志向だ大変強かったことがわかった。また、中国では改革・開放政策が進行して行くにつれ従来の所属企業(単位)に対して見られたような企業べったり意識が少なくなっているように見受けられた。合理化志向についてもベトナムと日本の間にあり、現在の中国企業社会のあり方を象徴しているように思える。これに対して、日本は資本主義国でありながら、必ずしも労働者が資本主義的でなく、むしろ資本主義的な方策に対する一定の反発を内包しつつ自己の行動の方向性を調整しているようにみえる。このような三者の比較は社会主義とは何か、だけでなく我々の社会のありようにも反省的思考を求めるものである。
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