97年11月から98年1月にかけて兵庫、東京、神奈川、山形、宮城、秋田で合計24人の高齢者に対してインテンシブな調査を実施。65歳から90歳にいたる高齢者の視聴データを得た。生活環境要因による影響をみるため、できるだけ多様な地域の高齢者を選定したが、各対象者についてはそれぞれ家族構成、生活歴、出身地域、学歴、現在の身体状況など、視聴行動に影響を与えると考えられる諸要因を把握し、高齢者のテレビニュースの理解に及ぼす映像表現、音声表現の影響を探求した。 97年度は実態に即したデータを収集することを目的としていたため、(1)日頃の視聴行動およびニュースについてのインタビュー調査(インタビュー内容はすべてビデオカメラで撮影して収録)、(2)連続した1週間のテレビ視聴行動の記録(自記式を基本としたが、無理な場合は調査者が記録)、以上の二種の調査方法を採用した。その結果、まだデータの分析途上ではあるが、「映像表現、音声表現からみた高齢者のニュースの理解」については以下の知見を得た。 (1)声の高い女性アナウンサーの言葉は聴き取りにくい。 (2)キャスターのアドリブはノイズとして認識される傾向がある。 (3)ニュースをわかりやすく説明するための図や模型はわずらわしいと思われる傾向がある。 (4)早口でしゃべるキャスターは好ましく思われていない。 (5)テロップ、カット数が多いとわずらわしいと思われる傾向がある。 以上、インタビュー調査から得られた知見の一部である。今後、データの解析をさらに進めて知見を収歛し洗練させたうえで、次年度には大量調査を実施し、その結果を検証する。
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