本研究は、フランスにおける高校職業教育と高等教育の接続関係をテーマとしており、今年度はフランス人研究者の本研究に対するレビューをふまえつつ、高等教育機関に生徒を送り出す高校側の状況を可能な限り具体的に調査することに重点を置いた。その結果、以下のような知見を得た。 1. 職業教育を行う高校には、3年制の技術リセと2年制の職業リセがある。技術リセは、伝統的にテクニシャン養成を目的としていたが、近年技術バカロレアの取得が主目的となっており、テクニシャン養成は大きく後退した。技術バカロレアを取得すれば、普通教育のリセと同様、高等教育進学の基礎資格を取得できる。 2. 伝統的に熟練労働者養成を目的ときた職業リセは、修業年限の関係からもバカロレア取得は不可能であった。1980年代半ばの改革により、通常の2年制課程修了後さらに2年間の課程の修了で、職業バカロレアの取得や高等教育進学が可能になった。以後、就職に有利な高度な資格を求めて進学者が急増している。 3. 有力な技術リセは、行政上高等教育機関とされる2年制の上級テクニシャン養成課程(STS)が設置しており、技術バカロレア取得者を多く受け入れている。大学付設の技術短期大学部(IUT)が同レベルながら、普通教育出身者が大半を占めるのと好対照で、STSは技術教育出身者の主要な進学先として機能している。 4. STSとIUTはともに入学者選抜を実施しており、STSの場合同校卒業生も他校出身者と同様の扱いで、無選抜入学は認められない。技術リセでは、特別の進学指導(受験指導や進学先選定のための助言・情報提供等)は一般に学校の課題として認識されておらず、高校修了証でもある技術バカロレア取得に向けて通常の授業を行うのが一般的になっている。
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