研究期間の最終年度に当たる今年度は、高校・高等教育間の接続関係の改善に向けた改革の動きについて調査するとともに、これまで行ってきた研究の補足及び成果のまとめを行うことに努めた。その結果、以下のような知見を得るに至った。 1.リセ技術教育課程と職業リセでは、近年、高等教育への進学者が増加しており、教育目的も従来の就職準備から高等教育進学へと変化しつつある。教育課程面でも、普通教育教科の配当時間が増加し、職業教育の配当時間は相対的に縮小している。 2.職業教育コース出身者の最大の進学先の上級テクニシャン養成課程(STS)は、専門教育の比重が高く教育課程面で高校との接続関係が緊密である。STSに次ぐ進学先の技術短期大学部(IUT)はSTSより一般教育の比重が大きく、普通教育コースからの進学者も多い。そのため、職業教育コース出身者にはIUT進学は容易ではない。IUTの一部には、学力面で問題を抱える職業教育コース出身者の入学に消極的な学校もある。 3.STSとIUT入学者選抜に失敗した生徒は、バカロレア取得で原則無選抜入学が可能な大学に進学する。しかし、大学は高校の専攻領域と合致・類似の専攻領域が少ないうえに、一般教育の比重が大きく、技術教育課程出身者はしばしば学業困難に陥っている。 4.状況改善のため、STSやIUTの入学者定数の拡大や、職業教育コース出身者のための特別選抜や特別枠設定が必要と考えられるが、現時点ではそれらは進んでいない。職業教育コースでも高等教育進学を可能にするため、学力向上の指導や進学先選定等の相談等の指導が必要と考えられる。しかし、筆者の調査では、これらの指導は現時点ではまだほとんど取り組まれておらず、個人的努力に委ねられている。
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