大学院改革の動向とともに日米の学位制度の運用について調査研究と若干の分析を試みた結果、得られた知見の代表的なものは、次のとおりである。 1. わが国の現行の大学院制度は、課程制大学院として確立し、そのため一定のコースヮークの履修を義務づけ、論文審査・試験合格を経て学位に結びつくというアメリカ的大学院の性格をもっていた。しかし、その制度の運用においては、コースワークの比重の違いなど、かなりの差異が認められた。 2. わが国では、学位取得に至るプロセスや具体的な学位授与要件は各大学に任せられ、学位授与の円滑化や水準の確保は共通の課題となっているが、とくに文系における学位取得期間の長期化や学位授与比率の低さが大きな問題となっている。 3. 教育課程の改革を中心にすでに7割前後の研究科において改善や見直しが検討されているが、学位授与の改善の動きも多くみられ、とくに人文系における教員の意識改革が進められ、全体として課程博士の授与及びその方向が明確に認められた点は注目できる。また、理系を含めて学位授与プロセスの明確化や論文発表の公開制に取り組むところも増加している。 4. アメリカの大学院においては、カリキュラムの体系化をはじめ、段階的・系統的学習のための到達目標の明確化、学生の選択的学習による系統的履修機会の保障、集中的学習による学習効果の向上策など、制度の内容・方法面における改善や工夫が図られている。 5. また、学位取得過程も高度に体系化され、学習や研究のプロセスを重視し、それを適切に評価するようなシステムが確立されている。総合試験制を含む審査プロセスや論文作成の助言・指導体制の充実とあわせて、わが国の学位制度の効果的運用や、そのための情報公開や評価システムの確立が求められる。
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