昨年度に続いて、関係文献資料の収集に努めると共に、現地調査を実施することによって文献資料からは解明できなかった点を明確にした。また、「教育実習の手引」未収集の35国立教員養成系大学について、改めて資料請求をし、30大学から資料の送付を受けた。 本研究で実施した国・公・私立(課程認定)大学を対象とする質問紙調査の結果から、私は最も注目すべき点として、“教育実習=ブラックボックス"論を抽出した。これは、主として教育実習の大学教育からの分断と、その実習校への一任体制によって引き起こされている。現在、わが国の大学関係者によって、この点についての反省が、真剣に行われ始めている。この大学教育と教育実習を有機的に結び付けようとする動向は、従来わが国ではほとんど認められなかったもので、注目に値する。 私は、この“ブラックボックス"解明のための仮説として、新たに“理念型的5類型"を設定した。実際にこれを使って、各大学が編集した多数の「教育実習の手引」を分析した結果、新たに教育実習の理念・目的についての“二元論"が明確になった。 そしてこの“二元論"が、教育実習に多くの混乱をもたらしている事実を突き止めた。さらに、この克服のための方法として、教育実習において、“理論と実践の結合(相互性の保障)に基づいた研究"の重要性を指摘した。それは、“教育実習即教育研究"という短いスローガンで現わすことができる。 これらはすべて、目下、私が研究課題としている“教育実習学"構築のための重要な知見として役立てることができる。
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