研究概要 |
平成11年度の研究によって得られた知見は以下の通りである。 1 欧州連合(EU)の加盟国は1995年以来15カ国に増えているが,今日なお拡大の動きがあり、2002年頃までには,中・東欧6カ国とバルト三国,マルタ,キプロス,さらにはロシア(準加盟国として)にまで加盟が及ぶ可能性がある。 2 1997年10月2日に成立したアムステルダム条約は,マーストリヒト条約(1992年)によって導入されたEU共通市民権(Citizenship of the EU)の内実を更に一歩すすめたものになっている。 3 アムステルダム条約は,それまで認められていた市民権でのイギリスの例外を廃止し,社会的分野は加盟国すべてに適用されることになった。 4 ヨーロッパ市民とは「EU加盟国の国籍を有する人」という法的規定だけでなく,その文化的概念が模索されてきたが,1997年には欧州委員会内での教育・訓練研究委員会が「教育・訓練を通してのヨーロッパの完成」と題する報告書をまとめ,その中で文化的概念規定を試みている。 5 同研究委員会はヨーロッパ文明に共通する価値として,以下のものを挙げている。人権ないし人間の尊厳,基本的自由,民主主義的合法性,平和及び目的達成の手段としての暴力の拒絶,他人を尊重すること,連帯の精神,公平な開発,機会均等,合理的思考の原理(証拠と証明の倫理),生態系の維持,個人的責任。 6 イギリスでは教育の中にヨーロッパ的次元をとり込む試みをしてきているが,2000年9月からの新しいナショナル・カリキュラムの中で,中等教育では市民性教育を義務づけることになった。
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