本年度は、台湾におけるイングランド長老教会の宣教事業に焦点をあてて研究を行った。研究の進捗状況は、大きく次の3つの次元に分かれる。 1)19世紀におけるイングランド長老教会の宣教事業。イングランド長老教会がどのような社会的基盤に基づく教会であり、どのような背景のもとに中国・台湾に宣教師を派遣したのか。宣教師たちは中国の社会・文化をどのように評価し、そこにどのような文化摩擦が生じたのか。また、日清戦争の結果に伴う台湾領有を宣教師はどのような評価し、台湾総督府はどのような対応をしたのかを明らかにした。本研究の成果は、「『文明』の秩序とミッション-イングランド長老教会と19世紀のブリテン・中国・日本-」というタイトルで『年報 近代日本研究 19』に発表した。なお、同様の内容を、立命館大学の研究会、上越教育大学で開催された国際シンポジウムなどでも報告した。 2)1930年代の神社参拝問題。イングランド長老教会の経営する台南長老教中学が日本統治下の台湾においてどのような台湾人の教育要求に基づいて拡張し、総督府による神社参拝への要求にどのように対応したのかを明らかにした。本研究の成果は、教育史学会第41回大会において「台南長老教中学神社参拝問題」(於九州大学)と題して報告した。次年度中には活字化して公表する予定である。 3)この他に、カナダ長老教会の北部台湾の宣教事業、アメリカ長老教会の朝鮮宣教事業に関する資料・先行研究の収集・整理に努めた。
|