本研究は4年間にわたって継続し、最初の2年間は台湾におけるイングランド長老教会の宣教事業に焦点をあてて研究を進め、最後の2年間で最初の2年間の研究のまとめを行うとともに、朝鮮におけるカナダ長老教会の宣教事業についての研究に着手した。なお、研究課題においては、朝鮮におけるアメリカ関係宣教会の宣教事業もとりあげる予定であったが、この点については従来の先行研究を整理する作業を越えることができなかった。 研究実績をさらに具体的に述べると次のようになる。 1.台湾におけるイングランド長老教会の宣教事業 1930年代の台南長老教中学の神社参拝問題に関する論文をまとめた。台湾神職会の機関誌『敬慎』なども新たに利用しながら、イングランド長老教会の経営する台南長老教中学が日本統治下の台湾においてどのような台湾人の教育要求に基づいて拡張し、総督府による神社参拝への要求にどのように対応したのかという研究についてまとめ作業を行った。本研究の成果は、『思想』第915号(岩波書店)に掲載された。また、『Traces』第2号(岩波書店)においても、この神社参拝問題に関する原稿の内容も一部要約して組み込みながら、台湾におけるイングランド長老教会の宣教事業に関する総合的な研究を公表する予定である。また、台湾におけるカナダ長老教会の宣教事業については科学研究費受給年度中に研究成果を公表することはできなかったが、科学研究費報告書(冊子体)において現在の段階での研究成果を公表する予定である。 2.朝鮮におけるカナダ長老教会の宣教事業 カナダ長老教会による朝鮮宣教事業に関する資料・先行研究の収集・整理に努めた。特に1920年の間島地方における日本軍の朝鮮人虐殺行為(間島出兵)に対するカナダ人宣教師の告発に着目し、この告発の前提として、カナダ人宣教師と抗日民族運動の担い手にどのような関係が形成されていたのか、ということを明らかにするために、カナダ長老教会関係の文書や間東地方における朝鮮人の民族運動に関する先行研究や資料の収集に努めた。この問題についての現在の段階での研究成果も、科学研究費報告書(冊子体)において公表する予定である。
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