A群色素性乾皮症は、小児期早期より発症する重篤な日光過敏性皮膚炎に加え、加齢と共に進行する神経症状を伴う。学童期にはいると小頭症、聴力障害、視力障害、対光反射の遅延、低身長が進行し、10歳以降になると、言語障害、歩行障害、肢指の振戦、失調、下肢の変形が出現する。15歳頃から歩行不能となり、車椅子の生活に入り、20歳前後で寝たきりとなる。 本研究では平成8年に小学校特殊学級に入学した男児平成9年に通常学級に入学した男児、および保育園で統合保育を受け、平成10年に小学校特殊学級に入学した男児のA群色素性乾皮症3人の児童に対して、1)学習能力、2)運動機能、3)言語・聴覚・視覚、4)基本的生活習慣の会得、5)情緒・心理・対人関係、の面から分析・把握し、小児神経学的知見をふまえて問題点の解決策を見出し、患児の教育環境の充実と、能力の開発法を検討した。またこれら対象児の在籍する小学校の学校長および保育園の園長に対象児の教育環境についてのいインタビューを試み、患児の学校生活を含むQOLを向上させるために必要な教育環境とはどのようなものかを検討した。その結果、以下の知見を得た。1.知能発達は6歳時点で3歳以下であった。2.聴力障害は従来の知見よりも早期(5歳頃)に出現する。3.運動障害は患児の活動性が高い程、進行が防止出来、リハビリの一環に組入れられる。4.幼児期早期から特別に配慮した統合保育を開始するほうが、神経症状の進行防止効果があり、小学校入学後の指導も充実させる結果となる。5.学校の指導方針に学校長の考えが大きく影響しており、教育観、障害児観、人生観の他、その土地特有のものの考え方が加味され、同じ障害を持つ児童で、物理的教育環境が同じでも、受ける教育内容が随分異なっている。また親と学校との教育方針が一致して初めて効果的な指導が可能となることが、明らかとなった。
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