エスニック問題の克服をめざす多文化主義はグローバルな課題であり、多文化主義教育は各国・各地域・各種施設=機関で模索され施行されつつある。エスニック少数者集団に対する教育保障に関する海外動向の一端の把握が本研究の趣旨である。対象事例は、3国(イギリス・カナダ・日本)のコヴェントリー・ケベック・八尾の3地区である。3地区における政策立案や方針の先進・積極・普遍性にもかかわらず、多文化主義教育ないしエスニック集団に対する教育保障は、特に都市・貧困問題など、不平等の悪循環を打破していない。従って、イギリス・コヴェントリーでもカナダ・ケベックでも、財政の逼迫の中で生活・労働・文化・居住などの社会保障とともに、手厚い特徴的な教育保障を策定・推進している。 昨年度、カナダ・ケベック地区に関する調査を試みたが、本年度は、先行研究の整理とともに、イギリス・コヴェントリー地区における現地調査を試み、ロンドン大学・キングズ・コレッジにおいて研究計画のレヴューを受けた。 イギリスでは、教育科学省補助金は「エスニック少数集団達成補助金」に一括され(1999年初頭)、2000年4月からは学校への直接交付の「エスニック少数集団・短期滞在者達成補助金」に変更された。掲げた計画の成果・達成に見合う補助金体制の中で、コヴェントリー地区では、エスニック少数者集団に対する従来の多文化主義支援の教育活動を継承している。補助金の変更、国際学校の創設(1998年9月)などを契機に、エスニック出身者が居住しない地区・通学しない学校でも活発化の兆候が見られている。
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