本研究では、日米両国の大学における高齢者教育に関する実態調査結果の比較分析により、高齢社会に対応する大学開放の方法を模索し、同時にそれに関連する諸問題について考察した。 米国に関しては、まずAGHE会議に出席し、米国の大学の現状や研究動向に関して情報を収集した。本研究で用いた米国のデータは、288機関から寄せられた、中高年学生の在学状況、入試等における特例措置、財政面での援助、制度・設備面でのサポート、特別プログラムの実施状況、老年学関連プログラムの提供等、24項目の質問に対する回答がもとになっている。それらの回答を分析した結果、米国の大学では、現行制度を柔軟に適用して人口動態の変化に対応すると共に、教育老年学等関連科学の発展に努めていることがわかった。 一方、日本の大学に関しては、実態調査の送付先が特定できず、学生の年齢別データの収集が困難ではあったが、中高年学生の趨勢、制度・設備面等での改善、公開講座など各種プログラムによる対応、大学関係者の意向等、8項目の質問に対して411大学から情報が寄せられた。そのデータや参考資料、及び機関訪問によって、大学開放に前向きに取り組む大学が徐々に増えつつある状況が把握された。 研究成果報告書では、以上の調査資料を整理してデータ分析を行い、前回の調査結果も参考にして比較検討した。個々のケースの詳細に関しては、将来海外での事例収集も行って、別の機会に発表したいと考えている。今後本研究課題で収集した調査データの多角的分析と活用を含めて、高齢社会に対応する大学モデルの開発に向けて、研究を発展させていきたいと考えている。
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