平成9年度は、障害児のトランジッション保障のあり方を解明するために、以下の4つの研究作業を進めた。 第1に、盲・聾・養護学校の高等部に関する施策について、47都道府県及び12政令指定都市の教育委員会に対してアンケート調査を実施した。その結果、高等部の整備はほぼ充足された状況に達していると思われたが、なお重度重複障害児等への訪問教育の整備・学科の再編・進路指導の充実・養護学校における専攻科の開設などが課題となっていることが判明した。 第2に、養護学校高等部設置校539校を対象に、進路指導主事の職務の実態と意識に関するアンケート調査を実施した。この結果については、現在集計作業中である。 第3に、上記1において今後の課題として認識された養護学校における高等部専攻科の整備に関して、先行的に試行中の私立養護学校7校を訪問調査し、設立の経緯・教育実践の変遷・教育課程・卒業生の実態などについてまとめを行った。当初は高等部本科卒業時点で就労できない者を対象に「落ち穂拾い」の性格を有して発足した側面が大きかったが、社会参加を見通した職業教育の継続・充実、子どもから大人への育ちを保障する青年期教育の視点が登場し、学校から社会への移行保障の一環として位置づけられつつあることが判明した。 第4に、二年次に行う北欧との国際比較のための資料収集および研究レビューを行った。北欧では18歳を区切りとした成年(成人)観が一般的であるが、それを挟む形で14・15歳から24・25歳に及ぶ持続的・継続的な移行保障サービスを整備する方向にある。その際、適切な情報を提供したり、本人自身の自己決定・選択を援助するために、カウンセラ-やガイダンスの専門家からなるサポートチームが編成される方向にあり、注目された。
|