1. [比較研究]日本の学校教育において、進路指導は進学・就職指導として狭く理解され、学校-社会間移行は卒業時における瞬間移動と見なされている。しかし、OECD(経済協力開発機構)は障害を有する青年のトランジションを(1)自立と自律、(2)生産的活動、(3)社交関係・地域参加・レクリエーションと余暇活動、(4)家庭での役割履行という4つの領域で「大人になること」と同義に幅広くトータルにとらえ、14・15歳〜20歳台半ばの期間を想定している。北欧では18歳を区切りとした成年(成人)観が一般的であるが、それを挟む形で青年期の持続的・継続的な移行保障サービスを整備する方向にある。その際、適切な情報を提供したり、本人自身の自己決定・選択を支援するために、カウンセリングやガイダンスの専門家からなるサポートチームを編成する等の試みがなされており注目された。 2. [実証研究](1)盲・聾・養護学校の高等部に関する施策について47都道府県及び12政令市の教育委員会に対してアンケート調査を実施した結果、高等部における訪問教育の実施、重複障害学級の整備、学科の再編、進路指導の充実、養護学校における専攻科の開設などが課題となっていた。(2)養護学校における高等部専攻科を開設している私立養護学校7校を訪問調査した結果、本科(3年制)ー専攻科(2〜3年制)の接続に関して職業教育一貫型、普通教育一貫型、普通教育ー職業教育型の大きく3類型が抽出できた。加えて、結果を分析中のものとして、(3)養護学校高等部設置校539校を対象にした「養護学校高等部におけるトランジション保障体制に関する調査」 (358校、回収率66.4%)、(4)鳥取県の養護学校(知的障害)4校における進路指導並びに高等部卒業後の進路実態調査、(5)全国の障害者職業能力開発校等の郵送ないし訪問調査を行った。 3. 専攻科を含む高等部教育は移行保障の一環として青年期教育の視点において充実されなければならない。
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