中国では、80年代以降、「四つの現代化」実現のために高等教育の分野において種々の改革が実施されてきた。とくに、これまで無償であった高等教育が有償となったことに象徴されるような「市場化」に伴う劇的な変革が進んだ。こうした高等教育界における市場化や大学組織の再編状況を解明するため、本年度はまず、『人民日報』、『光明日報』、『中国教育報』、『中国高等教育』、『教育研究』など、中国で発行される新聞および教育専門誌の中から関連する論文、論説、記事を広く収集、翻訳し、整理・分類して、検討した。 この過程で明らかになったのは、計画経済体制から市場経済体制への移行に伴って、大学の運営効率向上を目指した学内管理運営体制の見直し、大学間協力、産学提携、異なる設置母体間の大学共同管理、複数大学の合併、国立大学の地方移管など、既存の機関の組織再編が行われたばかりでなく、従来存在しなかった私立大学が出現し、急速に発展してきており、一部は既存の公立校に準じて設置認可されるなど、まったく新たな状況も生まれてきた事実である。民弁大学と呼ばれる私立高等教育機関については中華社会大学、黄河科技大学など個別ケースに注目して、その運営や教育の実状に迫るべく努めた。 なお、本年度はこの研究課題に関して中国国内で最も先進的な研究活動を展開している厦門大学高等教育研究所を訪問し、潘懋元名誉所長、劉海峰所長をはじめ同研究所の専門家の前で本年度分の研究成果の一部を報告するとともに、本研究の妥当性や意義を検討し、高い評価を得た。
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