1.各市における市立学校(幼稚園を含む。)とその教育のあゆみ、現状及び今後の方向は、それぞれの市の歴史や伝統、財政状況その他の要因により様々であり、中核市の場合はいっそう多様であった。 2.現在各市において固有に取り組まれているには、市立高等学校と市立幼稚園の改革である。前者は主として、特色ある学校・学科などの設置と入学者選抜制度の改善と中心に、施設設備の改善や学校間連携など、多様化・個性化の方向に進んでいる。後者については、私立幼稚園との調整を図りながら、保育年限・時間延長などの方向を追究する一方で、施設面で市立幼稚園の縮小化を図っているところが少なくない。 3.制令都市は、地方自治の一つの単位として意議を有するが、教育行財政上の重要権能を有するわけではなく、特に中核市はそうであった。このことについて、市側には以前から教育権限移譲の要望があり、中核市の調査では、関係財源の移譲、小中学校教科書採択権や教育長任命承認権の委譲が望まれてきた。 4.市立学校は、府県立学校と市立学校の間にあって、大きな役割を果たしてきた歴史を持つ。なかでも高等学校は、中等職業教育や女子教育振興のために、地域の要望に応えて設置された例が多い。しかし、普通教育偏重や受験競争激化の風潮の中にあって府県立や私立の学校に押されているケースや、狭い範囲内での人事交流が停滞の原因のなっているケースなど、改善が望まれている面も見られた。 5.今後さらに多数の資料を収集分析し、表記の主題に関する制令都市の教育努力を明らかにすることは、21世紀の教育改革を考える上で必要なことだと痛感した。本研究成果報告書では、そのための基礎的・総論的論考として、制令都市の教育権能の形成と問題点、及び市立高校教育改革の現状と課題を中心にまとめた。
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