海外・帰国子女の問題はある意味で一段落したと言われるが、最近では、以前の帰国生が成人し、社会人として日本の図内・外で職業をもつなかで、人との「違い」をそのまま抱えていることは新たな現実として受け止めなければならない。そこで、本研究では、 (1)海外での教育経験を経て社会人となった人々がその経験を現時点でどう捉えているか (2)帰国して日本の教育機関にはいった経験を社会人となった現時点でどう捉えているか (3)彼らが社会人としてもっている価値観・友人関係の特性はなにか という諸点を解明するために、主に1980年前後にニューヨークで調査を行なった当時、現地で出会った児童・生徒・学生で現在社会人として活躍している人々に対して、調査、ならびに面接を行なった。その結果、以下の点が明らかになった。 (1)中学生以上の年齢での海外経験は、現地校の場合、大変辛い思いとなっている。大抵の帰国生は最初の1年は泣いて過ごしたといい、その辛さは結局親にはわかってもらえないとコメントしている。 (2)中学生以上の年齢で現地校にはいった場合、結局現地のネイティブと友人関係は結べない。現地佼にいた日本人生徒あるいは外国人生徒と気が合えば、やっと安心できる環境づくりができる。 (3)辛い経験をしている間は親を恨んでいるが、社会人になってふりかえると、他の人にはできない経験をさせてもらえたと感謝の気持ちに変わる。 (4)海外滞在中、日本人学校に通学した場合、帰国時に日本語での苦労が少なかったことはさておき、英語力等いわゆる帰国生の特性を充分に身に付けられなかったことを悔いている。 (5)社会人となるころまでには、自分が帰国生であることによる特性や、一般の日本人との違いも自分なりに冷静に受け止めることができるようになっている。
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