本年度は進歩主義と改造主義の比較考察を試み次の三つの論文にまとめた。 第一の論文は、進歩主義者がインドクトリネーションをどの様に捉えているかを考察した「進歩主義者のインドクトリネーション観」(椙山女学園大学人間関係学部創立10周年記念論文集「人間の探求」、1998年3月)である。ここでは、進歩主義者が、インドクトリネーションを、主体的、批判的、創造的学習を重視する民主主義的教育に反するものとして擁護しないが、その定義に関しては見解を異にしていること、及びその主要な争点は、教師の立場の明確化や知識の教え込みをインドクトリネーションと区別するか否かに関連していること等について明らかにした。第二の論文は、デューイ、ボ-ダ、チャイルズらの社会改造論を究明した「学校論-社会改造と関連して-1(杉浦宏編著『デューイと日本の戦後教育』世界思想社、1998年5月)である。ここでは、現在の日本の学校教育の課題となっている「生きる力」の育成にデューイらの学校論が有益であること等を明らかにした。第三の論文は、進歩主義者チャイルズと改造主義者ブラメルドとの社会改造論の異同点を検討した「チャイルズとブラメルド」(日本デューイ学会紀要第39号、1998年6月)である。ここでは、改造主義がplanned societyやブループリントを重視するのに対して進歩主義がそうでないこと等について明らかにした。
|