この研究は近代におけるインドとわが国の教育・文化の関係について考察したものである。この目的において日本女子大学校(当時)を範とし1916年にD.K.カルウェによってインドのマハーラーシュトラ州プネに創設されたインド女子大学を取り上げた。 この考察を進めるに当たっては、近代における日印両国関係の進展、今世紀に入って急展開を示すインドの民族運動、等を視野に入れて、とくに次の諸点の解明を中心とした。(1)日本女子大学校がモデルとされた理由及び背景、(2)両女子大学創設者の女性観及び女子教育思想、(3)政府の女子の高等教育に対する政策、(4)インド近代教育史上の同女子大設立の意義、(5)同女子大の発展課程、(6)同女子大の法的処遇、(7)両女子大学のその後の関係、である。 この研究の結果について言えば、近代における両国の教育・文化の交流は極めて密接なものがあること、わが国はこれまで世界に向かって強力に自らの文化を発信していたこと、当時のわが国の近代教育は世界的に見て先進性、普遍性を有していたこと、また、わが国の産業・技術の発展とそれ以上に教育の発展がインドの民族運動並びに国民教育運動の興隆に大きな影響を与えていたこと、最後に、教育・文化の交流研究は比較教育学研究において重要な意味を持つこと、等に関しその一端を示し得たことである。
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