本研究により次の点が明らかになった。 1 わが国における障害児の就学指導にかかる問題事例の多くは、父母、学校関係者、教育行政関係者の間に適切な信頼関係が成立していないことを示している。これは学校情報・教育行政情報および当該子どもの個人情報が父母に知らされていないことの一つの帰結であると考えられる。 2.学校関係者、教育行政関係者には、当該子どもに関する評価・判断などやその基礎となる情報を、父母に知らせることに対する警戒心がたいへん高いという傾向が見られる。また、個人情報保護条例等による個人情報開示請求に対して当初より敵対的姿勢で望む傾向もあり、障害児への教育保障を父母との共同事業とは考えていないと推測される。 3 米国では、Family Educational Rights and Privacy Actにもとづく生徒一般の個人情報開示請求権の保障に加えて、障害児に関してはIndividuals with Disabilities Education Actにもとづく個別教育計画策定課程への親参加が保障されている。父母による個人情報開示請求権の行使に、父母、学校関係者、教育行政関係者に障害児教育を共同事業として意識させるとともに、信頼・協力関係をつくりだしていくモメントを見出すことは困難である。他方、個別教育計画策定課程という共同作業への参加は、各障害児に対する教育保障の共同責任体制であり、各関係者の間に信頼・協力関係を生み出すルートとなりうる可能性が見出される。
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