本年度の研究では、教育改革の潮流である「市場原理」がどのような背景から世界各国で政策として支持されているのかについての理論的研究を進めた。この研究には、イギリス教育改革の思想的背景である自由主義的思想史の系譜をたどる作業と、ポストモダンと呼ばれている現代社会がどのような構造的変化を起こしているのかを、現代社会学の最新理論を整理することで明らかにした。 これらの理論的整理作業と同時に、イギリス教育改革についての学校と国家の葛藤を現地新聞、雑誌等の記事を収集し、内容別のデータベース化を進めた。現在、このデータはキーワード検索可能なデータベースとして広く公開を前提に整備を進めている。 以上の研究からの発展として、教育という営みが、やがて学校という場を離れて、たとえばサイバースペースのようなネットワークに拡散していく可能性が高いことが、各国の教育改革の動向からも分かった。こうした、教育のネットワーク化を理論的に整理した成果として、加藤潤著『マルチメディアと教育』(玉川大学出版、1999年3月)を得た。これは、教育改革の比較分析から得られた副産物ともいうべき成果である。 また、来年度予定しているフリースクールの実態調査のための基礎文献の収集も手がけた。さらにフリースクールの歴史研究の必要性があることから、国会図書館での資料収集を予定している。
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