本研究は、「知識学校・親の参加型」学校教育法制を擁しているドイツとの対比において、わが国の「生活学校」を検証し、学校の役割・権利と責任に関する実定法制や教育理論を分析・検証するとともに、あわせて日独両国の小・中学校長のこの面での意識を探ることによって、「学校に固有な役割(権利と責任)」を比較法制的な観点から実証的に折出し、これに関する法制論を構築しようとするものであり、本年度は以下のような研究を行った。 (1)日本の「生活学校・学校独任型」法制とドイツの「知識学校・親の参加型」法制の構造分析 標記のように特徴づけられる日本とドイツの学校教育法制について、いうところの「学校の役割・権利と責任」とかかわって、以下のようなメルクマ-ルを摘出し、その法的構造を明らかにした。 (1)公教育としての学校教育の目的・任務、(2)国家の学校教育権と教育の自由、(3)学校・学校関係の法的性質、(4)義務教育における「義務」の内容(就学義務と教育義務、学佼に代わる私教育の可否)、(5)学校と学校以外の教育主体の協同制度(親の学校参加、民間教育機関・社会教育団体との提携、社会人の活用など)、(6)学校の教育権と親の教育権・生徒の自己決定権との関係、(7)学校の教育責任と不法行為責任の範囲と限界(生徒指導・部活・学佼行事の位置づけ、学枝事故責任など)、(8)学校教育のための時間的粋組み(5日制、半日学校、授業時数、教員の勤務時間など)、(9)学校段階・学校種別教育課程の内容と変遷・価値観教育の位置づけ。 (2)ドイツの研究社や教育関係者からのレビューの実施 上記の法制論研究および次年度以降に予定している「校長調査」と「親調査」を実施するための知見を得るために、平成9年11月に2週間ドイツに出張し、ドイツ国際教育研究所、マックスプランク教育研究所、ヘッセン州文部省、ハンブルク州文部省、ボン大学等を訪問し、研究課題に関しドイツの法制・学説・判例状況等についてレビューを受けた。
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