本研究は、「知識学校・親の参加型」学校教育法制を擁しているドイツとの対比において、わが国の「生活学校」を検証し、学校の役割・権利と責任に関する実定法制や教育理論を分析・検証するとともに、あわせて日独両国の小・中学校長のこの面での意識を探ることによって、「学校に固有な役割(権利と責任)」を比較法制的な観点から実証的に析出し、これに関する法制論を構築しようとするものであり、本年度は以下のような研究を行いかつ作業を進めた。 (1) 日本の「生活学校・学校独任型」法制とドイツの「知識学校・親の参加型」法制の構造分析 標記のように特徴づけられる日本とドイツの学校教育法制について、いうところの「学校の役割・権利と責任」とかかわって、以下のようなメルクマールを摘出し、前年度に引き続きその法的構造を明らかにすべく法制(論)分析を行った。 (1)公教育としての学校教育の目的・任務、(2)国家の学校教育権と教育の自由、(3)学校・学校関係の法的性質、(4)義務教育における「義務」の内容(就学義務と教育義務、学校に代わる私教育の可否)、(5)学校と学校以外の教育主体の協同制度(親の学校参加、民間教育機関・社会教育団体との提携、社会人の活用など)、(6)学校の教育権と親の教育権・生徒の自己決定権との関係、(7)学校の教育責任と不法行為責任の範囲と限界(生徒指導・部活・学校行事の位置づけ、学校事故責任など)、(8)学校教育のための時間的枠組み(5日制、半日学校、授業時数、教員の勤務時間など)、(9)学校段階・学校種別教育課程の内容と変遷・価値観教育の位置づけ。 (2) 「学校の役割・権利と責任に関する調査」の実施 学校に固有な役割・権利と責任を探るために、平成11年2月、全国の公立中学校長470名、私立中学校長200名を対象として標記の調査を実施した(回収率70.3%)。現在、調査結果の集計作業を進めているところである。
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