研究概要 |
90年代に入り、中国の改革・開放政策の中心は「社会主義市場経済」化を推進することとなった。各方面での規制緩和・民営化を断行することで、従来の中央集権的体制から分権的体制への転換を図っている。こうした施策は社会各方面に多大な影響を与えているが、高等教育の方面においてもドラスティックな改革が行われている。 本研究の初年度の1997年では、大卒者の就職政策と制度改革について、調査研究を進めてきた。1997年3月に「普通高等教育機関卒業生の就職に関する暫定規則」が中国国家教育委員会によって公表され、従来の政府による「入学者統一募集と卒業者統一職場配置」制度が廃止され、「供需見面・双向選択・自主択業」すなわち、供給側の卒業生と需要側の雇用機関の双方が面会し、雇用に案する諸条件を検討し,双方は条件を照らし合わせた上で、選択を行うという、実質的に卒業生側に職業選択の自由権を賦与する就職制度へと転換した。この大卒就職政策の改革によって、大学と政府、大学と社会、大学と学生の関係は大きく変わった。市場経済の進展に上記大卒就職メカニズムが、如何に機能し、また反面如何なる問題が生じているかについて考察した。更に高等教育参入者に如何なる影響を与え、今後の高等教育発展にどのような課題が残されているかについて、分析を加えた。 研究作業としては、まず、大卒者就職政策の変遷と改革の背景を整理した。次に「普通高等教育機関卒業生の就職に関する暫定規則」を全訳し、この改革案について分析を行った。更に、南中国の大学関係者にインタビュー調査を実施し、収集したデータに基づいて、大卒者就職の現状と問題点の分析を進めている。1998年に、この成果を「中国の市場化経済の導入における大卒者の就職」の論文にまとめ、日本比較教育で研究発表を行う予定である。
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