本研究の目的は、李朝時代および解放(独立)後の時代と比較しながら、植民地統治下における朝鮮社会の特徴を再検討することにある。(1)植民地時代になされた農村調査から社会組織に関する民族誌的記述と抽出し、(2)個々の農村における社会組織の諸要素の種類とその組み合わせの実態を類型化し、(3)その上で李朝期および解放後と比較して“伝統的社会組織"の持続性および変動の実態を再検討することである。これは、“伝統的農村社会"を単一の理念型としてではなく、諸要素の組み合わせの多様なあり方において捉え、その変化の方向を検討しようとするものである。 この目的にそって、本年度は基礎的資料の収集を主目標として作業を行った。そして朝鮮総督府の刊行物(『朝鮮彙報』、『朝鮮』、『朝鮮総督府調査月報』、『朝鮮地方行政』)と京城帝国大学刊行物を中心として、植民地時代の地方行政制度および地方行政と自然部落の関係、ならびに現地調査に基づいて発表された論文、著書をリストアップし、約300件の文献資料の存在を確認した。
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