本研究は、次の2点を主要課題とした。1、スリランカ民族対立に関する記述の網羅的収集とデータベース化。 2、在日スリランカ人の実態と民族対立の関係についての調査。次が成果の要点と結論である。 1、スリランカ研究の動向;研究文献目録の作成とデータのファイル化を行った。そこから次の結論が引き出された。スリランカ研究は、50年代〜60年代は歴史、言語、民俗。土地関係中心の研究 70年代〜80年代前半は文化、宗教、儀礼の文化人類学的研究、80年代後半〜現在は民族対立を対象にした研究(歴史、言語、文化人類学、政治学等)という流れが顕著にある。 2、在日スリランカ人の民族間関係:在日スリランカ人が関係する活動、集団等について調査を行い、データのファイル化を行った。個人へのインタヴューも行った。シンハラとタミルの民族間コミュニケーションの促進を目的とした集団が希有であることがわかった。そのいっぽうでは在日のタミル独立主義支援運動やシンハラ仏教中心主義運動の支援は数こそ少ないが継続的に存在する。しかし在日期間中は民族対立よりも経済活動、勉学等を優先する無関心層が大半である。 なお研究の過程で在スリランカNGOの活動の重要性に気づき、在スリランカの主要なNGOのデータのファイル化を行った。その結果つきのことが了解できた。スリランカのNGOは80年代後半に急増した。活動母体の所属により、海外NGO、国内NGO、混合NGOに分類できる。70年代は開発型のNGO(例えば村落の経済自立運動、土壌開発運動など)が中心だったが、民族対立が激化した80年代後半には、人権型NGO(女性権利擁護運動、児童権利保護運動等)が多くを占めるに至った。国内世論はNGOに対して両義的である。NGO援助は積極的に受け入れたいが、外国文化の進入、民族文化への介入、海外資本の経済支配への危惧が大きい。
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