研究概要 |
本研究の最終年次である平成12年度においては前年度までに引き続き石川県鹿島郡中島町で実地調査を行うとともに.本研究の過程であきらかになった.農村地域から大都市圏へ転出した人々と,出身地域との関係の重要性を検証するための調査を,東京都においても実施した.調査の主対象地である能登半島中部地域では.今世紀初頭より関東,関西の大都市圏への転出は一般的な現象であったが.1960年前後までのそれが主として過剰人口の問題を解決するためになされたのに対し.それ以後はむしろ少子化と高学歴化のもとでの積極的選択としての転出であることが.具体的.実証的にあきらかとなってきた.一方.調査対象地域では.こういった若年層の転出にともない.過疎化.高齢化が進行しつつあるが.個々の世帯レベルでは.転出者と地域に残っている者との間には密接な関係が維持されており,交通事情や情報交換手段の発達により.その関係のありかたは.新たな展開もみせている.一見過疎化の進行している地域においても.そこでの生活のスタイルは,大都市部のそれとさして変らなくなっているという状況も見られる.こういった変容の過程は現在も急速に進行しており総括は容易ではないが.今年度末には代表者.分担者によって.この過程の経済的,社会的,文化的側面を分担して分析,執筆した報告者をまとめる予定である.
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