愛知県南知多町の篠島において、シラス漁の漁師自身が漁獲行動について記録し続けた「漁業日記」(1968年〜1991年)について記録・整理し、その記載内容を調査した。 現地調査として、篠島において、夏期(8月)に2週間の住み込み調査をおこない、「漁業日記」の整理とともに、携帯型複写機を用いて、1968年から1991年の全記録内容の複写をおこなった。そして、得られた「漁業日記」のうち、1968年から1970年の3年分の全内容を対象として、パーソナルコンピューターを利用して、月日、気象、漁獲行動の内容(漁場名、網入れの方向、漁獲量、魚名等)などの項目によりデータベース化し、また、数量的資料については統計化をはかった。とくに、日記に登場する漁場名については、すべて地図上で確認して、漁場の利用状況を具体的に明示し、漁獲対象魚種の季節変化と漁場利用の変化に対応関係のあることの見通しを得た。また、日記の記載内容について、漁獲行動にかかわる民俗知識の聞き取り調査によって得られた伝承資料と対比することにより読解して、1968年分については、その全記載内容を翻刻し、注釈を付した。この「漁業日記」が自然環境に関する民俗知識と漁獲行動の記録であり、現代漁業のなかで民俗知識が実際にどのように用いられているかを知る上で、民俗学的に貴重なデータとなることを確認した。そのほかに、この日記の所有者のライフヒストリーや、シラス漁の活動内容の概略について聞き取りをおこなった。
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