研究概要 |
愛知県南知多町の篠島において、シラス漁の漁師自身が漁獲行動について記録し続けた「漁業日記」 (1968年〜1991年)の記載内容を調査した。夏期(8月、9月)にのべ2回2週間と冬期(12月)に1週間の住み込み調査をおこない、「漁業日記」の記載内容にかかわる聞き取り調査とシラス漁を中心とする篠島の漁業全般に関する聞き取りと参与観察調査をおこなった。シラス漁とは、シラス(和名カタクチイワシ)とコウナゴ(和名イカナゴ)を漁獲対象として、2艘が網を曵いて漁獲する網漁であるが、その作業手順を理解する中で、運搬船による乗組員移動とシンドという網上げ作業が重要であることがわかった。乗組員移動による漁獲フォーメイションとシンド上げについては従来報告されていなかった。また、1978年から1980年分の日記について、その全記載内容を翻刻した。日記の記載内容について、数量的データを統計化するとともに、漁獲行動にかかわる民俗知識の聞き取り調査によって得られた伝承資料と対比し,、日記に登場する漁場名については、すべて地図上で確認して図示した。漁場利用を沿岸地名の利用頻度数という形で抽出することによって、漁場利用の季節変化を、沿岸地名の利用頻度数の推移として表した。その結果、篠島のシラス漁の1年間の漁獲量・高推移から、3月のコウナゴ、5月前後のシラス、10月前後のシラスにピークができるというパターンを見出した。そして、その漁場利用をみると、3月のコウナゴは三河湾・伊勢湾の内湾全体、5月前後のシラスは渥美半島大山以東、7月8月は渥美半島全体に広がり、10月前後のシラスは渥美半島大山以西から三河湾・伊勢湾内湾入り口というように、漁獲パターンに対応して、漁場を季節的に変化させていることがわかった。
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