研究概要 |
1.アイヌ民族に関する報道・論説を体系的に収集・整理・分析した。1997年以降〜2000年1月までの約3,800件の資料(新聞記事約3,200、雑誌記事約360、その他約240件)を入力処理し、下記2.の要領で簡易データベース化した。必要に応じて、記事内容にかかわる事実関係を諸機関・諸団体・個人協力者を通じて確認し、関連資料を入手・整理した。 2.資料は1点ごとにレコード処理し、分析情報として、キーワード、主題分類、執筆者分類、媒体分類、地域分類、資料評点、教材適性、見出し分析、同報記事指定などを付加した。先行研究で処理ずみの資科とあわせて累積件数は14,512件となった(ファイル容量12MB)。うち、主要資料(約5,900件)についてはハードコピーを主題分類430項目に応じてファイリングした。これによって、1999年末までの約10年間の報道資料の全貌が把握できるようになった。 3.研究初年度には二風谷ダム訴訟の判決およびアイヌ文化振興法の制定という画期的な出来事があり、上記の資料体(コーパス)には、これらの意義づけをめぐる諸々の議論、そして、振興法施行後のさまざまな文化運動・社会運動の動向が反映されている。 4.いわゆるアイヌ「新法」制定運動への行政的対応としてのアイヌ文化振興法に対して当初は静観する傾向にあったアイヌ民族側から、まもなく「旧法」体制の歴史的ひずみとしての「共有財産」処分問題の解決を求める議論が急速に盛りあがっていく過程が把握できた。また、それに対する主流社会側からの論評や対応が(「新法」制定運動期のそれに比して)時期的にも量的にも大きく遅れる傾向を見せたことが98〜99年期の特徴として浮かび上がった。
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