本年度は、日本国内のイグレシア・ニ・クリスト(Iglesia Ni Cristo)の支部教会、信者グループのうち、とくに大阪市内、つくば市内の関係者等に面会し、インタビュー調査をおこなった。イグレシア・ニ・クリストの日本における教会形成および宣教は、当初は在日米軍基地で働くフィリピン人、フィリピン系アメリカ人の信者らによって、自主的に始められたものであった。したがって1970年代のなかばまでは、正規の牧師などは派遣されておらず、信者らが自宅などを用いて行う祈祷会形式の宗教活動がその中心であった。しかし、1980年代になると、上記の在日米軍関係者以外に、フィリピンから日本にやってくる出稼ぎ労働者、日本人と国際結婚をしたフィリピン人の信者などが急速に増加したため、在日米軍基地所在地以外の全国各地に支部教会、信者グループが形成されるようになった。近年設立された、つくば市におけるイグレシア・ニ・クリストの教会は、当初は小規模の祈祷会であったが、信者数の増加にともなって、東京の支部教会から正規の牧師が定期的に訪問するようになった。その後、信者らがフィリピンの教会中央に対して、正規の支部教会の新設を働きかけた結果、新たに教会堂を建設し、フィリピンから教会監督が訪問して、教会の新設をおこなった。これまでのところイグレシア・ニ・クリストは依然として、フィリピン人を主な信者としているものの、フィリピン人以外の信者も徐々に増えており、そのことが今後の教会の活動、儀礼、神学等にどのような影響を及ぼすかが注目される。
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