研究概要 |
本研究は,研究者が民族学的情報を他者,とくに一般へ伝達する手段としての博物館の機能に注目し,民族学的情報伝達装置としての博物館の意義をいくつかの角度から再検討することを目的としている。本年度は,最終年度にあたるため,報告書の作成を主眼に研究をすすめた。各分担者は,過去3年間の研究遂行状況を考えに入れながら報告書の作成にむけた補足的な調査もおこなったが,このほか,以下のオリジナルな調査,研究をおこなうことができた。 1 展示分析。今年度も,北海道立の歴史博物館である北海道開拓記念館のアイヌ展示部分を分析した。研究は二つあり,その一つは,授業を使った実験的研究であり,もう一つは展示資料の意義についての研究である。前者は,大学でのアイヌ文化論の講義の初日と最終日とに,アイヌ資料の展示風景を写した同じ写真を提示し,そこから受けるイメジの変化を確認しようとする試みである。(矢口祐人)後者は,「伝統的」資料とされる木彫りの盆のなかには,はじめからなんらかの展示を意図してつくられたものがあったことを示すものである(出利葉浩司)。なお,来館者に対するアンケート調査を昨年実施したが,その成果について,いくつかの研究大会で報告し,ひろく議論をおこなった(佐々木亨)。 2 博物館展示研究。日本国外がアイヌ文化をどのように捉えているか。その例として,アメリカ合衆国におけるアイヌ展示について,評論した。(矢口祐人) 以上は,それぞれが研究論文として発表,あるいは学会や研究会などで口頭発表している。 また,コレクション研究の基礎作業として,ロシア国立民族学博物館のアイヌ資料写真を複写した。
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