研究課題
今年度は、研究計画の2年目にあたる。前年度に引き続いて、東北大学附属図書館に入り、狩野文庫・別置貴重書の大部分の調査を終えることができた。この間に、800枚に及ぶ史料カードを作成することができた。新たに発見された注目すべき史料としては、「文化元子年十一月梶野秀名とひそかに蒙仰崎陽にいたる記」がある。ロシア使節レザノフの宿所(長崎市内)の探索を命ぜられた幕府御庭番古坂逵博による道中記である。貴重な情報に溢れた原本である。「東西蝦夷地引渡御用留」は、箱館奉行所組頭の保持していた書類綴(ファイル)である。1860年東北諸藩への蝦夷地分割引渡に関連する貴重な情報、なかでも支配領域の境界確定をめぐる現地に即した興味深い情報が含まれている。箱館産物会所に関連する史料(「手控」の表題がある横帳3冊)、「韃靼漂流記」の写本群なども注目される。昨年度に発見された「杉浦兵庫頭書留」「函府人名録」については、国文学研究資料館・東京大学史料編纂所などにおける関連調査によって、その貴重史料としての価値を吟味(比較・検討)することができた。七海雅人「東北大学附属図書館所蔵箱館奉行関係史料二題」(裏面参照)に、その成果の一端を速報している。これまでの調査によって、北方交流史料に関する日本有数のコレクションの姿が浮かび上がってきた。来年(計画の最終年度)には、残りの史料(古地図類・開拓使関連資料など)に当たりつつ、関連施設の調査による貴重史料の吟味を進めながら、史料カードの完備を目指すことにしたい。あわせて史料目録の公刊を目指すことにしたい。
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