本年度は科学研究費補助金交付の二年度目に当たり、前年度の成果を受け、引き続き基礎的作業を中心に研究を進めた。 まず、前年度、研究環境整備のために導入したパソコンによる収集史料・資料の整理及び研究推進のための簡易データ・ベースの作成を継続して行った。なお本研究におけるパソコンを用いた研究方法については『日本歴史』誌上で概要を述べた。次に直接あるいは間接に関連する史料及び資料を収集するための調査も継続し、藤原・平城・平安宮などの都城遺跡における最新の調査成果を把握するため奈良国立文化財研究所などで資料の収集を行い、また内閣文庫・東京大学において後宮・女官に関連する史料・研究文献の収集・調査を行った。さらに比較のため中国の後官制度に関する日本及び中国における研究文献の収集も行った。 以上のような史料・資料の収集と整理、簡易データ・ベースの作成をもとに、本年度は奈良時代中頃の宮都である紫香楽宮の実態を解明し、あわせてそこでの女官をはじめとする官人たちの勤務状況を明らかにするために研究を進め、その成果の一部を「天平十七年大粮文書の再検討(上)」として公表した。これについては来年度も継続し、「(下)」の公表を予定している。 また国立国際日本文化研究センターの共同研究「公家と武家」で報告した古代貴族・官人の喪葬制度について、その原因を解明し、かつ女性の喪葬についても検討を加えた論文を現在「律令国家と喪葬」の題で執筆中である。
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