第2年目に当たる本年度の研究は研究実施計画にしたがって実施しほぼ計画通り行なうことができた。本研究の目的である都市間海運の研究には城下町、旧港町の廻船問屋等の関係史料の発掘が重要であるが、本年度は旧八戸藩の城下町で港町でもある八戸の廻船問屋西町屋の新史料を大量に調査することができた。本史料の本格的な分析は平成11年度になるが、近世海運は賃積船体制を基本とすること、その賃積船体制は各藩の流通統制機構および城下町・港町の問屋層の在り方と密接な関係があることを実証的に明らかにすることができる見通しとなった。すでに、前年度は仙台藩の海運機構を分析し、仙台藩の海運の主力を構成した石巻穀船は仙台藩の地船をもって構成し藩の買米制に規制されて藩の賃積船となり、江戸からの帰り荷に仙台城下町の特権商人仲間である六仲間が注文した上方・江戸荷物を賃積船として海上輸送する体制であること明らかにした。この海運機構の特質は仙台藩と江戸の間で実施された仙台藩の買米制と密接な関係の下で展開したのであるが、八戸藩の海運機構も基本的に賃積体制であることが確認できた。八戸藩は飛び地の志和領地を除く現八戸地方は米をほとんど産出せず大豆・海産物が主たる移出物資であった。他藩では納屋物として商品輸送される物資であるが、同藩がこれら物資を藩の専売物とした結果、江戸および大坂へのこれら物資の海上輸送もまた賃積船体制で行なわれた。輸送物資は違うが仙台藩と基本的に同じである。輸送に参加する回漕船は筑前・大坂・伊豆・浦賀・江戸・石巻などを船籍とする他国船が圧倒的に多いのであるが、買積船として入津した廻船も登荷輸送には賃積船として輸送した。藩の政策および城下町などの特権問屋商人が遠隔地である江戸や大坂の特権商人との間で構成する流通機構によって廻船の在り方が決定されたことが八戸藩についても明らかにすることができた。次年度はこの海運機構の特質を実態的に明らかにすることが課題で、八戸藩の関係史料の収集はほぼ終了してる。
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