前年度に引き続いて、飯田、金沢、福島、盛岡、秋田、青森、弘前などで資料調査を実施し、戦中・戦後初期の新聞・雑誌を初めとする資料の収集と関係者からの聞き取りをおこなった。このうち、とくに飯田では松尾支所所蔵の役場文書のうち、戦時中の翼賛団体および戦中から戦後初期にかけての旧松尾村男女青年団の連年の詳細な記録を閲覧・複写することができ、これによって、既に発表した研究(「青年団における戦後の出発」)をさらに発展させられる見通しが立った。青森・弘前では戦中・戦後の文化団体資料のほか、同時期の図書館と読書に関する資料の収集と聞き取りをおこなった。福島と盛岡では、青年団、婦人会・女性新聞、遺族会関係資料を収集した。一方、メリーランド大学プランゲ文庫所蔵の戦後初期日本の雑誌・新聞のマイクロ・フィルム(国会図書館蔵)の複製を収集して、各地の文化団体・青年団について検討した。そして、研究の一環として、早稲田大学・メリーランド大学ほか主催のプランゲ文庫記念シンポジウムにおいて、「戦後初期における文化運動の高揚」と題して報告した(1998年12月6日、早大にて)。以上、前年度の調査と合わせて、沖縄・九州から東北までのいくつかの地域の資料調査の結果、戦中から戦後初期にかけての文化状況と文化運動についての、おおよその見通しを得ることができた。今後は、婦人会・遺族の動向などをも整理し、それらを統合して、戦中・戦後初期の社会と文化についてまとめる予定である。
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