戦時下の地方文化運動と戦後初期の文化状況および文化運動の検討を目的として、両年度にわたって国内各地の資料調査と聞き取りをおこなってきた。また、現地調査とは別に、メリーランド大学所蔵のプランゲ文庫資料(雑誌と新聞の一部は国会図書館にマイクロ・フィルムで所蔵)から、戦後初期の新聞・雑誌のコピーを収集した。これらの資料の分析にもとづいて、(1)戦後初期における文化運動の昂揚、(2)青年団・地域婦人運動の再出発、(3)遺族および未亡人運動、についてまとめ、それらを通じて「戦後の出発」の特質を明らかにすることを企図した。そのうち、今回の報告書では(1)と(3)についてまとめることができた。(1)については、これまでも特定の地域の文化運動の研究はあったが、各地の資料を検討し、全国的な文化運動の昂揚の実態とその意味を明らかにすることができた。(3)については、これまで研究は乏しかったが、プランゲ文庫資料の新聞などを手がかりとして遺族・未亡人の組織・運動・意識を検討した。これは文化運動というよりも社会問題・社会運動というべきものであるが、「戦後の出発」の一面をよく現していると考えられる。(2)については(3)の中で部分的に言及したが、独立の章として盛り込むに至らなかった。
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