近世百姓結合を示す文書として、頼み証文を全国的に集成するため、平成9年度は法政大学図書館で、全国の自治体史の史料集を網羅的に点検して、同証文を抽出する作業をおこない、これにつづいて国立国文学研究史料館史料館(通称文部省史料館)において、補足調査を実行した。また各地の文書館などで史料収集にあたった。平成10年度はこれらの補足調査と史料整理をおこない、一部、金沢経済大学経済研究所の研究費補助を得て、データベース作成を実施した。その結果、頼み証文は東国に自然発生的にはじまり、様式の整備は関東において最初にすすんだこと、つづいて甲信越、上方へひろがり、東海、北陸、東北などにおよんだことなどが実証できた。また頼み証文の呼称は、一般には頼み一札・頼書・頼み状であるが、関東・甲信越地方にのみ、頼み証文の呼称がはやくからおこなわれていたこと、また中国・四国・九州、東北でも現在の福島・山形県以北はほとんど発見例がなかったことなどが明らかになった。その概略は、拙著『近世の百姓世界』(吉川弘文館、1999年5月刊行予定)に示した。またデータベースは、整理がつき次第、公開する予定である。
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