本年度は、以下の基礎的調査と史料収集・整理及び考察を行った。 1、延喜式古写本のうち天野山金剛寺所蔵本を直接調査し、金剛寺本についてはすべて写真撮影をした。九条家本、吉田家本、武田祐吉博士旧蔵本については複製本によって新訂増補国史大系・神道大系本との異同を調査した。 2、新儀式は、内閣文庫旧蔵四本(現国立公文書館)、尊経閣文庫本、国会図書館所蔵本を調査し、群書類従本との異同を調査した。また新儀式補逸についても神宮文庫本・本居宣長記念館本を調査記録した。 3、本朝月令は、尊経閣文庫本を再調査し、裏書及び補綴形態より原文書の形態を推定した。 4、儀式は、尊経閣文庫本二本、内閣文庫本旧蔵本六本を調査したが、新たな知見を得ていない。なお、尊経閣文庫本政事要略を再調査し、「儀式 貞観」の書名表記が旧金沢文庫本に存在することより、伝本儀式が、少なくとも平安時代末には貞観のものと認識されていたことを確認した。 5、後世における内裏儀式・内裏式・儀式の引用状況を、平安時代末までを限って悉皆的に調査し、伝本との異同とその理由を検討した。同時に、行事項目ごとに西宮記・北山抄との儀礼上の相違と相違の生じた理由や背景について考察した。 6、光孝天皇朝から醍醐天皇朝までの儀式関係記事を、編年順を基本にカード型データベースを作成した。 以上は、本来の研究課題を遂行するために基礎的調査作業であり、いづれも未完であるが、次年度以降においてその成果を逐次発表していく予定である。
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