本年度は基礎調査として、植民地期の朝鮮で発行されていた『東亜日報』『朝鮮日報』『中央日報』『毎日申報』などの新聞や、大連の日本語紙『満州日日新聞』から、「満州」での朝鮮人風俗営業・女性売買に関連する記事を収集した。また外務省外交史料館・防衛庁防衛研究所図書室などに所蔵されている、非公開史料の調査にもつとめた。とくに本年度は、日露戦争期の軍隊と「売買春」の関係、日露戦後の「満州」における公娼制度の確立過程に焦点をしぼって分析を進めた。この時期の朝鮮における日本軍の行動については『駐韓日本公使館記録』などを参考資料として活用した。 以上の成果の一端は、1997年7月27日の京都大学現代史研究会大会で「『満州』における日本型公娼制度の移植と朝鮮人『接客婦』」という題目で報告し、さらに11月14日には、韓国・釜山大学校韓国民族文化研究所主催の国際学術大会「東アジアの中の韓・日関係」において、「植民地時期韓国人の風俗営業について-中国東北地方を中心に-」というタイトルの研究報告をおこなった。 一方、いわゆる「慰安婦」問題に関する研究の現段階を紹介するために、8月には共著で『いま歴史教育を考える』(全国在日朝鮮人教育研究協議会)を出版した。また6月27〜28日の京都大学人文科学研究所・国際シンポジウム「日・中・朝間の相互認識と誤解の表象」でも、權泰檍・ソウル大教授の報告に対するコメント(朝鮮植民地支配と現代日本・覚え書き」)として「慰安婦」問題に言及した。
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