本年度も昨年度に引き続き、植民地期に朝鮮で発行されていた新聞『毎日申報』や、大連の日本語紙『満州日日新聞』などを中心に、「満州」での朝鮮人風俗営業・女性売買に関連する記事を収集するとともに、外務省外交史料館などに所蔵されている、非公開史料の調査につとめた。その他、いわゆる「慰安婦」問題に関する政府公開史料を全面的に収録した『政府調査「従軍慰安婦」関係資料集成』全5巻を購入し、一次史料の再検討をおこなった。その結果は、大阪産業大学研究プロジェクト「近代国家と大衆文化」の例会で報告した。 これまでの研究成果の一部は、「日露戦争と日本による『満州』への公娼制度移植」(『快楽と規制』大阪産業大学産業研究所)と題する論文で公表した。本論文は、日露戦争期の日本軍による「売買春」管理の実態と、これを継承する形で成立した「満州」における公娼制度の特質を論じたものである。一方、「慰安婦」問題に関連して、戦後日本の朝鮮近代史認識の変遷を整理し、韓国に紹介する目的で、「現代日本反動勢力の韓国史認識-日本型歴史修正主義が登場するまで-」(韓国語、『歴史批評』第44号)と題する論文を執筆、発表した。同じく「慰安婦」問題に言及した、国際シンポジウム「日・中・朝間の相互認識と誤解の表象」(京都大学人文科学研究所、1997年6月)でのコメント(「朝鮮植民地支配と現代日本・覚え書き」)も、98年12月に公刊された同シンポジウム報告集に収載された。
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