本年度は研究のまとめとして、戦前に大連で発行された日本語新聞『満洲日日新聞』を集中的に調査し、「満洲事変」勃発以前の中国東北地方における、朝鮮人風俗営業・女性売買関連記事を一通り収集することができた。その他、国立国会図書館法令議会資料室、東洋文庫、大阪市立大学学術情報総合センターなどの所蔵する、「満州国」の風俗営業関連法令や、接客業者の統計を調査、収集した。以上の研究成果の一端は、1999年12月に京都市で開催された近現代東北アジア地域史研究会第9回大会で、「『満州』における日本型公娼制度の移植・展開過程と朝鮮人風俗営業」と題して報告した。また大阪産業大学産業研究所の共同研究プロジェクト「近代国家と大衆文化」の例会でも、とくに『満州日日新聞』の記事を中心に報告した。 一方、植民地期に朝鮮人の風俗営業が、「満洲」以外の日本帝国の支配地域にも拡大していた点を掘り下げて理解するために、台湾やサハリンにおける法令資料や統計なども調査した。とくに台湾については、1999年9月、京都大学人文科学研究所共同研究「日本の植民地支配-朝鮮と台湾-」班の例会において、「台湾在住朝鮮人の風俗営業・覚え書き-従業者人口と管理制度の推移-」と題し、植民地期台湾の公娼制度の内容と朝鮮人風俗営業従事者の変遷を報告した。 その他、日本軍慰安婦問題をめぐる最近の議論をテーマに開催された、シンポジウム「第4回梶村記念講座:梶村史学から現代を問う-"自由主義史観"批判」(1999年5月、川崎市)では、パネリストの一人として「日本型歴史修正主義の論理とその歴史的脈略」というテーマで報告をおこなった。
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