本研究では、第2次世界大戦前、植民地朝鮮をはじめとする日本帝国の支配地域に展開していた朝鮮人風俗営業の実態を把握するために、まず朝鮮で発行されていた朝鮮語紙『東亜日報』『朝鮮日報』『中央日報』『毎日申報』や、大連の日本語紙『満州日日新聞』『満州日報』などから、朝鮮や中国東北地方における、朝鮮人風俗営業・女性売買に関連する記事を収集することにつとめた。また国立国会図書館憲政資料室・法令議会資料室、外務省外交史料館、防衛庁防衛研究図書室、東洋文庫、大阪府立中央図書館、京都大学附属図書館・人文科学研究所、大阪市立大学学術情報総合センター、神戸大学附属図書館・経済経営研究所、東京大学東洋文化研究所・法学部図書館、および台湾の国立中央図書館台湾分館などに所蔵されている刊行・未刊行資料を調査し、関東州や「満州」駐在の日本領事館、「満州国」、台湾、サハリンなどにおける公娼制度・風俗営業関連の法令資料や統計などを収集した。このような調査によって、日露戦争期の軍と「売買春」の関係、日露戦後の「満州」における公娼制度の確立過程と朝鮮人風俗営業の動向、植民地台湾における公娼制度の内容と朝鮮人風俗営業の数的変遷などを把握することができた。 以上の研究成果の一端は、京都大学現代史研究会大会(1997年7月)、韓国・釜山大学校韓国民族文化研究所主催の国際学術大会「東アジアの中の韓・日関係」(1997年11月)、近現代東北アジア地域史研究会第9回大会(1999年12月)、および京都大学人文科学研究所共同研究「日本の植民地支配―朝鮮と台湾―」班の例会などで報告した。
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