研究成果は、おもに次の3点からなる。 第1に、大坂の幕政機構は武士によって担われていたために、武士の存在の究明がまず必要である。それを知るための史料として大坂に独自な武鑑があるが、「大坂武鑑」と総称されるものの種類、さらにその全国的調査をして、所在目録(ただし未定稿)を作成した。 第2に「大坂武鑑」を分析することを通じて、大坂の武士人口およびその種類、また大坂の町人や周辺の農民が、武士たちと公式・非公式にどのような関係を作っていたか、武士をどのように見ていたか、解明した。これまで町人の町としか大坂を見なかった点からいえば、画期的な成果であろう。 第3に、大坂武士の典型と思われる町奉行所与力のうち、史料の恵まれている内山彦次郎について、その経歴を中心に明らかにして、大坂武士の生きた姿を描きだした。これも大塩平八郎に偏った武士像の修正に役立つだろう。 なお町奉行日記の収集にも努め、一部解読、利用したが、その全面的な活用は、今後の課題である。
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