近世の歴代将軍の葬送儀礼をはじめとする祭祀儀礼を国家的なものと捉え、これに関わる諸問題を解決しようとするのが本研究の課題である。3か年計画の2年目にあたる今年度は、(1)歴代将軍の葬送儀礼に伴う諸動向について、初年度に引き続き検討するとともに、(2)日常における歴代将軍の祭紀儀礼に深く関係した幕府寺社奉行関係の文書の収集、検討を行なった。 (1)の葬送儀礼に関係しては、秋田県立公文書館「佐竹文庫」収蔵文書の中から、将軍代替わり関係の文書を収集した。また、佐竹氏の儀礼関係文書を大量に収録する『国典類抄』のなかから、関係記事を抜き出し、分析を進めた。 (2)では、田原藩・館林藩など藩主が幕府の寺社奉行や奏者番を務めた大名文書の中から葬送儀礼に関する文書を調査収集した。 また、内閣文庫所蔵「御規式書留」を紙焼きで収集したが、同史料は幕府殿中規式に関する規式書・次第書を多数書き留める。祭祀儀礼に限定されるものではないが、幕府の年々の規式の構成がどのような手順で確認され、式次第が確定したものか確認できる興味深い内容である。 現在、前年度に収集した史料と付き合わせながら、以上の収集史料の分析を進めているが、儀礼そのものの分析と同時に、儀礼に関係した者達についての分析の必要性を強く感じている。儀礼の存在とは、その執行に関係する人々の意向を強く反映するものとして理解したい。将軍の葬送儀礼、祭祀儀礼などではことさらである。 今後、こうした観点から分析をさらに進める予定である。
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