研究課題/領域番号 |
09610358
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研究機関 | (財)元興寺文化財研究所 |
研究代表者 |
村田 忠繁 (財)元興寺文化財研究所, 保存科学センター, 研究員 (50210042)
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研究分担者 |
内藤(中越 (正子) (財)元興寺文化財研究所, 保存科学センター, 研究員 (40280838)
日高(石井 (里佳) (財)元興寺文化財研究所, 保存科学センター, 研究員 (30250351)
金城 直子 (財)元興寺文化財研究所, 保存科学センター, 研究員 (20169585)
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キーワード | 固着文書 / 凍結乾燥 / 真空乾燥 / 引張り強さ / 引張り試験 / 加圧乾燥 |
研究概要 |
本研究の主務である凍結真空乾燥法を利用した固着文書の展開は、元興寺文化財研究所保存科学センターに設置してある大型真空凍結乾燥機やデシケーターなどを使った簡便な方法での実施等を提供された試料をもとに臨床的に試験をした。 前年度からの課題でもあった実施試料の選択は、歴史学や表装技術などの専門家からも教示をいただき、一定の指針を見出すことができた。それは、(1)水漬けによる原試料の破壊の恐れがないもの(2)展開により紙葉破片などが散逸しないもの(3)固着をそのままにしておくと廃棄されてしまうもの などの基準である。 一方、紙の強度変化の課題については、紙が水に濡れることによって強度変化をさせることは知られているが、和紙の種類や方向による強度変化の定量的データは少ないことがわかった。そこで、水の影響による強度変化を確認するとともに、強度の回復の可能性も探った。 試験方法は小型引張り圧縮試験機を使い、JISによる紙及び板紙の引張り強ざ試験方法(P8113)・紙及び板紙の湿潤引張り強さ試験方法(P8135)に準じて試験を行った。 結果を見ると、繊維方向による強度は、雁皮紙・新聞紙・堵紙の順で確認でき、特に雁皮紙に顕著に見られた。紙を水に晒した後の凍結真空乾燥・自然乾燥の引張り強さは、それぞれ低下している。自然乾燥中に加圧処置を取ると引張り強さはかなりの程度まで戻る。乾燥後の加圧処置での回復度が微増であることからして、水に濡れた紙の加圧処置の意味は大きいと言える。凍結真空乾燥での加圧処置は、乾燥中も乾燥後も効果はなかった。 文書修復での加圧の重要性はあらためて確認できたが、固着文書の展開における凍結真空乾燥では、水が媒介として必要でありその結果紙力の回復が望めない以上、前述した同法の利用基準は重要である。 また今後、文化財や歴史資料として求められる紙の強度を探り、定量的なデータの提示が急務になった。
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