この3年間、侯外廬著『中国封建社会史論』(北京・人民出版社刊、1979年)の内容を全面的に検討し、著者の考えた封建社会というものの本質論、およびアジア社会におけるその特殊性、ことに中国社会においての特殊性の理解について多方面から検討した。この書は紀元前3世紀から18世紀におよぶ中国社会史を対象としており、またマルクス主義者としての立場からマルクス・エンゲルス・レーニンの諸著作をきわめて多く引用、解釈しているため、当研究の作業としては広範な書物の検討が必要となり、歴史学のみでなく哲学・社会学・経済学等多分野の研究の知識を動員することが要請された。主な検討内容は以下の通りである。 1.著者が依据するマルクス主義の古典においての、「封建社会」というもののとらえ方について、原典にあたってその引用箇所を逐一あたり、検討した。 2.本書で引用されている中国古典について、逐一原史料にあたり、その史料的性格、社会史史料としての意味等について検討した。 3.著者独自の用語法の意味することについて、理論的・言語学的方面からその定義を検討した。 この書物のうち、特に第3論文として所載する「秦漢社会の研究」(中文で約80頁分)について特に集中的検討を行い、研究報告書として、この論文の全邦語訳と、くわしい訳注を付し、簡単な「解説」を付したものを作成した。
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